従兄のヘルメット

叔母の家に遊びに行った時の話。

叔母の家には、今はもう使われていない部屋が一つある。

叔母の息子、私の従兄の部屋だ。

そこにヘルメットが転がっている。

事故のあった日、従兄はあのヘルメットを被って家を出たらしい。

警察の人は、ダンプにぶつかった従兄の頭がどうしても見つからないと言っていたという。

それはそうだよと思う。

だって、従兄は部屋に戻ってきているんだから。

ヘルメットの顔が見えるところは赤黒いプラスチックで覆われているけど、私には見える。

叔母さんには見えないみたいだけど、言わない方が良いよね。

朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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