ハル、タクミ、深央姉さんのお話聞きたい?
じゃあそこに座って、あれは深央姉さんが小学生の頃のこと。
学校からの帰り道、ちょっとだけ寄り道をした。
変なお店を見つけたの。
カウンターの上に並べてあるのは、九つの小さな箱だけだった。
黒い服に黒い帽子の男の人が店にいた。
箱には何が入っているのか気になるよね、私も我慢出来なくて聞いてみた。
「ねぇおじさん。ここ、何を売っているの?」
男の人はクスッと笑って「聞きたいかい?」と言って話しだした。
「あるところにお母さん思いの男の子がいたんだ。
ちょうど君と同い年くらいだったかな。
ある時、お母さんが病気になってね。
もしかしたら死んでしまうくらいのさ。
その子は必死に祈ったんだ。
『お母さんを助けてください』ってね。
そしたら突然、男が現れたんだ。
黒い服に黒い帽子を被った男はこう言ったんだよ。
『俺は悪魔だ。お前の願いを聞いてやろう。ここに九つの箱がある。
一つだけ、どんな病気でも治す薬が入っている。残りの箱には死が入っている。
選ぶのは一回だけ、死んだら魂をもらう。
さぁ、どれにする?』 ニヤニヤと悪魔は笑った。
少年はお母さんを助けたくて、箱を開けたんだ。」
そこまで聞いて、私は続きが気になった。
「その子は、どうなったの?」
「聞きたいかい?」
男の人はニヤリと笑った。
「じゃあ、この箱から一つだけ選びなさい。答えが入っているからね。
でも、それ以外には死が入っている」
「……という話なんだよね。」
そう言って私は話を終えた。
従妹のハルと従弟のタクミが同時に聞き返した。
「それでどうなったの?」
「深央姉さんは答えを聞けたの?」
私はニヤリと笑って、小さな箱を九つ、カバンから取り出して2人の前に並べた。
「じゃあ、この箱から一つだけ選びなさい。答えが入っているからね。
でも、それ以外の箱には死が入っている」
……という話なんだよね、その後2人がどうなったのかって? 聞きたいかい?