色鉛筆

小学生の頃、図工の時間に使う色鉛筆を忘れた時の話。

先生に怒られるのが嫌だった私は、落し物箱に入っていた色鉛筆をこっそり借りた。

落し物なのに、その色鉛筆はほとんど新品みたいだった。

でも画用紙に星を描こうと思ったら、画用紙が真っ赤になった。

持っているのは黄色の色鉛筆なのに。

でも、赤の色鉛筆とも全然違う。

黒ずんだ汚い色だった。

しかも、塗りたてのペンキみたいに画用紙の表面がヌルヌル光って見える。

他の色を使っても同じだった。

私の画用紙はあっという間に、その赤黒い色一色になってしまった。

授業の後、その赤黒い画用紙を提出した。

絶対怒られると思ったけど、先生は私の持っている画用紙を見て、ニッコリ笑った。

「その色鉛筆、良い色でしょう?」

先生はとても優しそうな声でそう言って、私の頭を撫でた。

先生の手も、色鉛筆と同じ赤黒い色で染まっていた。

朗読: 怪談朗読 耳の箸休め

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