白いくらげ

くらげと名付けられた犬の話。

くらげはさんぽが大好きだ。

だからリードをつけるとおでかけだってわかるからとってもテンションがあがる。

さらに箱に入れと言われると車のおでかけだ。

車にのって少しすると目的地に着いたようだった。

箱ごとその建物に入っていく。

おでかけだと大喜びしていたのに、ここは割と嫌なことをされる場所だと思いだした。

そのうち呼ばれて、箱から出されると体重を測って、先生があらわれて私のお尻に注射した。

「いたくないよーいたくないよー」

と言っているが恐怖しかない。

そうしているうちに終わったようで、おやつをくれた。

その翌日からどうもご主人のいうことを聞いてしまう。

いつもなら吠えちゃダメだよ、などと言われてもまったく気にしないのに、

どうも体が勝手に動いて、ご主人がご飯を食べているそばでおすわりをしてしまうのだ。

ご主人も小首をかしげていたが、「いいこ、いいこ」と言って着替えに行ってしまった。

ご主人がでかけてしまったあと、くらげはひとりぼっち。

さみしいし遊びたいけど何もやることがないので寝る。

そうしていると2階から物音が聞こえた。

なんだろと思って立ち上がるとくらげと同じくらいのサイズの犬が階段から降りてきた。

よく見るともしかしてくらげと同じように見えるかもしれない。

「ワン」と吠えたらもう一匹も  「ワン」と返してきた。

くらげは楽しくなって今までやったことなかったけど、サークルからぴょーん!と飛び出した。

相手の犬も楽しくなって2匹でかけまわった。

遊び疲れると2匹でぐっする眠ってしまった。

しばらくすると「ワンワン」という声が聞こえる。

起きるとくらげも含めて4匹になっていた。

くらげにはもうわかっていた。

この現象が前日にうたれた注射のせいだということを。

あそこの先生は良い人のふりをした犬増殖化計画の組織員なのだ。

それからご主人が帰ってくるまでに犬は増え続けた。

部屋も手狭になってきたので勝手に扉を開けて出て行った犬もいた。

くらげが心配しているのはご主人がくらげをちゃんと見分けることができるかということだ。

それができなければ・・・・・・。

ワンワンワン・・・・・・ワンワン・・・・・。

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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