小学生の頃、男子に人気のカードゲームがあった。
私も好きで集めていた。
そのカードにはレアカードがあって、一万枚に一枚という確率で入っているらしい。
ウワサでは十万枚に一枚とも言われていた。 見たことのある人は居ない。
それくらいのレアだった。
ウワサによれば見分け方はいくつかあるらしく、
「カードの右上に小さな文字が入っている」
「その文字はR O K J E だ」
「イラストはホログラムタイプ」
「金色と黒色の枠で囲まれている」
全てを揃えて〈ある順番で〉出していくと最強の組み合わせになるらしい。
これだけでどんなカードにも負けないほどの。
だから、このカードを探しているクラスメートも多かった。
「深央、ほら、すごいだろ!」
ある土曜日の午後、クラスメートのカイトがバッグからカードの袋を取り出した。
少なくとも百以上あって、どれも未開封のものばかり。
「どうしたの? それ」
「近くの店からパクってきた。あそこのオヤジ、バカだからさ。
開けてみようぜ、これだけあればレアも入ってんだろ」
しかし、一枚もレアは無かった。
五枚入りの袋で百二十八あったんだけど。
カイトは怒って全部のカードを川に捨ててしまった。
「クソっ……今度は他の店からパクってやる」
カイトはカードを盗むことを繰り返すようになった。
私は怖いし、ついていけないしで、カイトとは遊ばなくなってしまった。
それから1ヶ月後、カイトが死んだと連絡が来た。
何者かに襲われ、自分の部屋に倒れていたらしい。
床に血溜まりが出来るほど深い傷だったという。
その手には、五枚のカードが握られていた。
お葬式に行くとカイトのお母さんが私の方へきた。
「これ、貰ってあげて」
カイトが息を引き取るギリギリ、最期にこう言ったらしい。
「深央に……」
四枚のカードを貰った。
血で汚れた、あのウワサのレアカードだった。
私は絶対にもう一枚は探さないと決めている。
Jのカードを。