学校の怪談 脱走した少年

これからお話しする怪談は、私の通っていた高校で、友達や先輩方から聞いた話です。

だいたいまとめると、四つのお話になりますが、よく考えると、全部つながるのではないかと思えてくるのです。

<一つ目の話>昔、高校の裏山に少年鑑別所があり、度々、脱走した少年が、学校内に迷い込んでいたそうです。

ある晩、やはり脱走した少年が、裏山の斜面をズズズズズーッと滑り落ちてしまい、身体のそちこちに深い傷をおってしまいました。少年はなんとか立ち上がり、そのままフラフラと歩き出すと、校舎の外れにあるプールにたどり着きました。

少年は、顔や傷口に付いた泥を洗おうと、プールの水面に手を伸ばしましたが、灯りも無く、水面が思いのほか低くて、そのままドボンと水の中に落ちてしまいました。

少年は、慌てて手足をバタバタと動かしましたが、傷も深く、やがて動きは止まりました。プールの底に足が付いて、ゆっくりと周りを見渡しました。プールサイドからは、上れそうにありません。かろうじて反対側の奥の方に、はしごの付いた上り口が見えました。少年は、首のところまで水につかり、丁度プールの第4コースをゆっくりと進みました。

その間も傷口からは、血が大量に流れ出し、少年は、気を失いそうになりながらも、必死に水の中を進みました。

何とか縦断して、はしごの部分に手をかけ、身体全体を使ってよじ登り、少年は、プールを脱出することが出来ました。

このままでは死んでしまうと思った少年は、校庭に出て、助けを求めるために民家を目指しました。最短距離で校庭を斜めに横断しましたが、途中何度も転び、体力も限界に達していました。最後には、這いつくばりながら、ようやくバックネット前までたどり着いたのです。しかし少年は、そこで力尽き、息絶えてしまいました。

<二つ目の話>学校の下駄箱の突き当たりに、畳2枚程の大きな鏡があり、皆そこでヘアスタイルとか服装のチェックをしていました。この鏡は、学校の開校時に設置されたそうで、歴史も古く、実に沢山の生徒達を見守り、映し出してきました。しかし、時々、黒いモヤの塊のようなものが映ると、噂になっていました。それはまるで、通る人の後を追うように、ぴったりと付いて行くそうです。

ちなみにこの鏡は、教室と体育館やプールの間にあります。プールの授業の後に、第4コースを泳いだ人は、必ず、この鏡で後ろを確認しなければいけないと、言われていました。

<三つ目の話>私の高校は、山の斜面にあり、第一校舎と第二校舎が長い階段で繋がっていました。この階段が、まるで山の急斜面みたいに危険。結構長い階段で、さらに一段一段の高さが普通の階段より低く、コンクリートのような材質なので、とても滑りやすかったのです。

階段の中央に、縦に手すりがありましたが、急いで駆け下りると必ず足がもつれて、階段を踏み外し滑り落ちる生徒がいました。

ズズズズズーッ、「ギャー!」

先生が、慌てて駆け付けるが、不思議なことに誰もいないという時が、度々あったそうです。

<四つ目の話>私の高校のソフトボール部の人の話ですが、夕方暗くなってくると、時々、バックネット前に、黒いシミのようなものが、浮き出てくるそうです。校舎の明かりや街灯で、かろうじて見えるそうですが、水が染み込んでいるかのように黒く、人の横たわったような形をしていたそうです。

以上四つのお話ですが、私には、一つ目のお話に出てきた少年の霊が、未だに学校の中を彷徨っているのではないかと思えて、気の毒でなりません。きっと寂しくて、時々、様々な形で現れていたのではないかと思います。でも、プールの更衣室を覗いていたのだけは、許せませんね。

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