指差す雑踏
扇風機の微かな風のみを頼りに暑さを凌ぐ夜。 テレビからは行方不明者の情報提供を促すニュースが流れ、アナウンサーが同じような文章を繰り返しているのが聞こえる。 行方不明者が云々という何度も聞い…
扇風機の微かな風のみを頼りに暑さを凌ぐ夜。 テレビからは行方不明者の情報提供を促すニュースが流れ、アナウンサーが同じような文章を繰り返しているのが聞こえる。 行方不明者が云々という何度も聞い…
僕が住んでいた町は田舎で、今考えれば漫画やドラマの世界のような場所だった。 山間の谷間に沿って拓けた郡の中にある一つの村だったが、今では周辺の村と合併して町になり、僕が住んでいた村は廃村と…
小学五年生の夏休みが明けたその日の朝、体育館での始業式が生徒の悲鳴で中断された。原因は、なんの前触れも無く突如として壁に現れた、顔のようなシミだった。 寂れた田舎町にお似合いの古い木造の体育館…
私は視力が良い方ではない。 それでも、今そこに居るのが彼ではない事は分かる。 瞬きもせず、見開いた大きな目でこちらをただ見続けている。 事の始まりは、付き合っている彼の家に私が半ば転がり込むよ…
僕の生まれ育った生家は、とびきり田舎の更に山奥に建っていた。当時小学生だった僕は、通学に片道一時間以上かけて歩かねばならず、その度に何故うちはこんな辺鄙なところにあるんだ、と嘆いたものだった。…
交差点で信号無視の車に突っ込まれたことで、初めて入院したのは地元の病院だった。 僕が子供の頃は古く小さな田舎の病院だったが、市町村の合併に合わせて新しい病棟を建て、真新しく中央病院と名を変えた…
「お米一粒でも残したらバチが当たるよ」 僕がまだ小さかった頃、祖父母にずっと言われ続けてきた言葉だ。父方の実家は小さい兼業農家で、田植えの時や刈り入れ時など、忙しくなる時期は両親と共に手伝いを…
葬式というものは何歳になっても慣れるものではない。故人が近所の人や知り合いくらいの間柄ならまだしも、親族ともなると気が重い。親族間の仲が良ければなおさら、しかも子供ともなれば、会場の空気は沈…
僕が中学生の時の話。 中学三年生になり、受験への焦りからストレスを溜めていた僕はその頃、少しの間でいいから一人になりたくて、よく夜中に散歩をしていた。僕の家は団地で、周りは車通りも無く、夜にな…
子供の頃の記憶というのは、とても極端なものだ。 楽しかったこと、悲しかったこと、学校の行事や家族の旅行。 他人にとっては特に他愛のないことでも、何故か覚えている、ということもある。 朧げで鮮…
私が中学生ぐらいの頃の話。 その頃住んでいた実家の向かいの家には、近所付き合いの悪い家族が住んでいた。 母子家庭のようで、たまに母親らしい女性が 派手な身なりで夜に帰宅するのを見かけることがあ…
皆さんも、人生で何度か”夢”を見ることがあると思います。 夢とはその人の深層心理を映しているのだ、と聞いたことがあります。 例えば僕の場合、心理的に不安な時は「誰かに追…
