「飽きた」を通して見た夢

 紙片に六芒星と「飽きた」の字を書き、その紙片を握るか枕の下に入れて寝ると、紙は無くなり異世界へ行ける。
 というオカルトを初めて試した時の話です。

 両親の不仲に悩み、人生にも悩み、行けるものなら行ってみたいと試すことにしました。
 しかし夜にやるのは怖かったので、昼に実行。
 すると夢を見ました。
 幼い私が遊び、それを母と父が見守っている夢でした。
 ですが父親の顔を見上げると、全く知らぬ他人の顔です。
 母と父が早々に離婚していれば、それぞれ今より良い人生が送れただろうに……という私の思考がダイレクトに反映された夢でした。

 目が覚め、現実の父さんに申し訳ない気持ちになりながら体を起こしました。
 その時ちょうど母が部屋に入って来ていました。「1階に降りてきなさい」と言います。
 家族そろってのご飯の時間に、私だけ中々降りてこないので呼びにきたようでした。
 母についていこうとして、少し違和感を覚えました。
 というのもこの頃の私は、昼寝をして起きるとほぼ必ず金縛りが起こっていました。
 それが今回はなかったなと。
 それから、母が部屋に入って来てまで呼びに来ることも珍しい。
 次には私の口から「ねぇ、これって夢じゃないの?」と言葉が出ました。
 自然と尋ねていたのです。
 すると母は振り返り、 そこで本当に夢から目覚めました。
 体は脱力しているのに、「飽きた」の紙は左手に固く握られている。
 それが怖くて、投げるように手を離しました。

 夢かと尋ねなければ、あの続きはどうなっていたのでしょう。
 あのまま母について行ったなら、1階にはあの見知らぬ父が待っていたように思うのです。

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